Style Academy | 木原浩勝×野口隆行 スペシャル対談

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スタイルキューブの養成所、スタイルアカデミーではタレント性を重視し、個性を開花、引き延ばすことをテーマにしている。そんなスタイルアカデミーでは2015年から注目の作家木原浩勝氏が教鞭を執っている。木原氏はスタジオジブリでのアニメ制作を経て出版企画や作家活動のみならず、講演や司会など活動が多岐にわたる。アニメを制作する側を経験し、更に言葉を「文字」と「声」の両方で縦横無尽に使いこなす希有な存在である氏によるその授業にはこれから声優を目指す人たちにとって必要な学ぶべきものがある。木原氏独自のカリキュラムと個性を伸ばすことを主眼とするスタイルキューブとの融合とは……!

kihara.jpg木原浩勝 PROFILE
『風の谷のナウシカ』を制作したトップクラフト入社。その後、創立時 スタジオジブリ入社。宮崎駿監督の下で『天空の城ラピュタ』に制作進行として参加後、制作デスクに昇格『となりのトト ロ』『魔女の宅急便』を手がける。スタジオジブリ退社後、扶桑社より日本怪談史上初であるとともに現在のJホラーや「実話」怪談ブームの原点となった 現代の百物語『新・耳・袋』により作家デビュー。また、コンセプトライターとして、書籍・ムック本などに企画・構成・執筆 を行い、ヒットメーカーとして知られる。企画・構成ブレーンを務めた『空想科学読本』(宝島社)シリーズは300万部を、自 身の「新耳袋」(角川書店刊)は累計130万部を超えるミリオンセラーとなった。

takami.jpg野口隆行 PROFILE
アニメ誌、芸能誌、ホビー誌などのライター、イラストレーターを経てフジテレビにて「ひらけ!ポンキッキ」等様々な企画に携わり、エンターテインメント業界にて多くのフォーマット作りを手掛ける。アニメ業界と芸能界の実績を買われ、2007年に株式会社アップフロントスタイル代表取締役就任、現在は株式会社スタイルキューブ代表取締役。長年の経験を声優の育成に活かし、ゆいかおり(小倉唯、石原夏織)、StylipS(能登有沙、松永真穂、豊田萌絵、伊藤美来)、三澤紗千香らを世に送り出した。たかみゆきひさ名義で演出家として「テニスの王子様100曲マラソン」などのステージを手がけ、映像監督・プロデューサーとしてアニメやアーティストのMV(ミュージックビデオ)も手がける。

僕たちが目指しているのは“本来の声優”なんです。

木原 まず最初に「声優になりたい」「声優になるんだ」と思っているみなさんも含めて、現在は「日本史上で最も若者が自分の力をよくわかっていない時代」なのではないか? そう思わせる驚くべき状況がここ4〜5年は顕著なんです。
それは何かと言うと、「自分の意見」がないんです。
例えば意見を求めると先に喋った誰かの言葉を取り上げて「「僕もそう思います」と。本来そんなことはそうそうあるわけがありません。
生まれた場所も両親も学校も友人も……あらゆる点で違うのに意見が全く同じなんてありえないですよ。

野口 よくわかります。今の教育って「点数を取るための手法」を知るための教育であって、殆ど考えさせることがない。
声優だけでなく、デザインなどプロフェッショナルを育てるためのはずの専門学校の教育でさえも技術を教えることが最優先で、考える力を育てたり、センスを磨くための教育は二の次です。
そのカリキュラムで一体何を学ぶべきか、その本質がすっぽりと抜けてマニュアル的な型にはまった人が量産される。

木原 マニュアルの一部……形的なことには対応しているとしても、マニュアルは誰のためにあるのか? には対応していないですからね。
ネット上で必要なものを検索・発見・抜き出し・貼り合わせをする能力はすごい。しかし肝心の本人の意見がない。自分のことを他人に伝える気持ちが希薄なんですね。
伝えることや表現というのは自分の中身を醸し出すもの。
声優と言うことで例えて言うなら、台本もらった時に大切なのはセリフを上手に読むことではなく「この人物はこうなんだ」と世界を膨らませて、今までやってこなかったことも含めて試行錯誤をすることなんです。
自分の声だからこの役をもらったと思うのは自由ですが、選んだ側にある「このキャラクターに君はどんな声を当ててくれるのかな?」という気持ちがあることを考える力はあるのだろうか? と感じるんです。

野口 僕はどうも最近は若い子は時に「勝手に自分の中に構築された声優的価値観」で役作りをして消化してしまっている人が殆どのように感じます。役者が勝手に「こうだ」と思い込んでしまっている価値観というか。

木原 あ、痛たた……。
ですので、自分が何者で何をやりたいかという前提が不在かもしれない上での「考える力」、それを第一に据えたカリキュラムにしたいです。
最近の調査によると若者の2人に1人が本を読まないそうです。本を読んだことがないのだから、その中身はもちろん、登場する人物像など読み解くことが出来るはずないですよね。
読み解くことが出来ない人は、他人の話を聞いて相手が何を言いたいのか理解出来るはずがない。言葉通りにしか受け取れない。
「怒っている」と「憎んでいる」は同一線上にあると思っているし、「怒っている」と「叱っている」の区別もつかない。「バカなことは言うな」と言ったとしても「お前はバカだ」と言っているわけではない。
そんなことがわからなかったりする。こちらが言った意味が理解出来ないから自分そのものを否定されたと思って折れてしまう。
言葉の意味を「考える」ことを身につけておけば、声優になれるか否かだけではなくて、どこに出ても恥ずかしくない人になれると思うんです。

野口 よく言っているんですけど、僕は今の「声優」という言葉が好きではないんです。声優という言葉を作ったがゆえに、枠にとらわれて声を当てることにフォーカスした演技になってしまっている。
知らず知らずのうちに「アニメのアフレコをするための演技」を目指してしまっているんですね。
声優という言葉がなかった頃は、テレビや舞台や映画をやっている人がアニメの声もやっていた。
そもそも演技が出来る人が声を当てていたんです。
でも今の人はアニメの声を当てている人を見て育ち、それを目指しているということの繰り返しになっています。これでは演技の幅が狭くなるのは当たり前。
良かれと思って作った声優という言葉が、自分たちの首を絞めているんじゃないかと悶々としていたんです。それなら今の「声優」という固定概念にとらわれずに人を育てようと思い、プロダクション業務をやり始めました。
やっていくうちにやはり業界的にもそれが望まれていることもわかり、徐々に「そう、そういう声優が欲しかった」と受け入れられるようになりました。僕たちが目指しているのは「本来の声優」なんです。


最後にモノをいうのは技術ではありません(きっぱり)。

木原 どんな職業もそうかもしれませんが、プロと名のつく世界への第一歩は、好きで好きで仕方なくて、「僕はこれしか出来ない」「これを取り上げられたら他にやりたいものがない」という人間が飛び込んでくるものだと思うんです。
三度の飯より芝居が好きな人間が入ってくる世界で。
それがテレビの進化にともないタレントという言葉が出てきて、楽をして面白くて人気者になってお金も入るという過剰な妄想を与え、今度はアニメブームがその延長線上に来ました。
でも、あらゆるプロの門は「覚悟して入る」気持ちがなければくぐるものではないですよ。

野口 それはどの世界でも同じですね。
特にこの仕事は「自分の代わりがいない」ものだから余計にそうです。
「自分の代わりがいない」ということ、それはつまり「自分」を知ることでもあり、そのためには「自分」と向き合う事も必要です。
業界に入る覚悟と同時に自分と向き合う覚悟も必要ですね。

木原 この養成所では技術面はプロの方が正しく教えて下さるわけですから、私は別のスキルを上げるように頑張ります。
「考える力」を育てること、そして、もうひとつカリキュラムに入れたいとのは、言葉には驚くほど恐ろしい力が秘められているということです。
「言霊」という言葉があるように、言葉には使い方ひとつで相手の気持ちをコントロールしたり出来る力があります。鼓舞することも泣かせることも、怒らせることも笑わせることも出来るんです。
「話術」といわれるように言葉にはテクニックがあります。それに気がついてさらにパーソナルな部分が合体すれば、すごく魅力的で一緒に仕事したい人が出来ると思うんです。
巧みに喋ってみんなを沸かせる力というのは、演技だけではダメだし、言葉だけでもそうはならない。
さらに相手の心を読み取って求めているのはこれだよねとスパッと切り込む力を持っていたらどこに行っても、どんな場面でも大丈夫ですよね。
そういう人を作る必要性があると思っていたところに今回のお話をいただいたので、やらせてくださいとお願いしたわけです。

野口 最近の子って「声優になりたい」という能動的な気持ちがあるのに受動的な子が多いんですよ。
そういった子たちがきちんと能動的になれたら素敵です。

木原 いつかここで学んだ子たちが、脚本を見ただけで演出のオーダーがある程度わかるような心のゆとりを持てたら、ワンランク上の自分を試すかもしれない。
そういう他では出来ない経験則を積ませてあげたいのですが、おそらく普通は試させてくれないですね(笑)。

野口 そうですね(笑)。よく言われるように声優にとって技術はもちろん大事ですが……

木原 しかし、最後にモノをいうのは技術ではありません(キッパリ)。
極端なことを言えばデビューが決まってからでも技術は追いつきますが、熱さはどうにもならない。
環境に対する対応力は早くてすぐに「いい子」が出来るんですけど、残念なことにみんな同じいい子だったりするわけですよ。これから仕事をする中で自分たちは常にふるいにかけられて、1個しかない椅子を競い合う訳です。
自分にぴったりの役を作って待っていてくれるなんてあり得ないわけですから、どうしても個性が欲しい。試したいと思わせる魅力が欲しいと思うんです。
これを読んでいる人は、おせっかいなことを言っているなと思うでしょうね。
しかし、結果として願わくば、ぐんぐん成長して卒業する時には同年代の友達が子供のように見えて「なに幼いことを言っているの?」と1年でガラッと変わることを理想としたいです。
もし周りの人が言っていることが甘いとか、近しい友達の言葉が面白くなくなってくるのは、こちら側に近付いていることを意味するわけですから……。
この学校がその子の人生のおせっかいなターニングポイントになれたらいいなと思います。

野口 そうなれるようにこれからも尽力していきます。

木原浩勝×野口隆行 熱対談! 開催決定!

スタジオジブリで宮崎駿監督の元、「天空の城ラピュタや「となりのトトロ」など数々の作品を手がけ、作家として累計130万部を超える「新耳袋」などのミリオンセラーを執筆、企画ブレーンとして『空想科学読本』など送り出した、アニメを知り尽くした男、木原浩勝氏、そして映像監督、演出家として長年数々のエンタテインメントを手がけて来たスタイルキューブ代表である、野口隆行のトークショーが実現!
今求められる声優とは、これからの世代に求められて行く声優とは、声優として生き抜くために必要な事など、声優志望の方々必見のトークショーとなっています。

■日時:2015年3月8日(日) 15:00開場/15:30開演
■会場:初台The DOORS
■出演:木原浩勝・野口隆行
■料金:無料 ※ただし、入場時にドリク代が600円かかります。
ご希望の方は以下のフォームからお申し込みください。
2月19日22時より受付開始します。

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